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池田誠の「今週の逸品」第18回 ~『仮面ライダー少年隊手帳』

少年仮面ライダー隊は仮面ライダーを支える少年たちのチームである

自転車を乗り回し、通信機の入ったペンダントで連絡をとりあう。機敏な動きとチーム力で仮面ライダーの戦いを強力にサポートするのだ!

 

***

 

さて今回の逸品は、この少年たちの活動をメインとし、その溌溂たる精神の涵養を世のちびっ子にすすめるアイテムだ。

名を「仮面ライダー少年隊手帳」という。決して「少年仮面ライダー隊手帳」と呼んではならない。

 

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サイズは90mm×128mm、表紙・裏表紙含めて全20ページ

 

念のため言っておくと、一応「少年仮面ライダー隊手帳」という品は別個に存在する。

ちょうど「仮面ライダーストロンガー」終了後、仮面ライダーリバイバルブームの頃に徳間書店『テレビランド』誌が企画で出したものだ。

一方、こっちの『仮面ライダー少年隊手帳』が発行されたのは、ばりばり1972年、「仮面ライダー」1号(新1号時代)放映真っただ中で、まさにリアルな当時物である。表紙には仮面ライダー1号と2号が威風堂々と肩を組み、左上に「冒険王」の文字。右端には「石森プロ・毎日放送・東映」の著作権マークがみえる。

これは自分にとって30年間、まぼろしの手帳だった。

 

 

あれは1972年、確か2学期が始まったばかりの頃だった。

ひとりの同級生がポケットから薄いミニ冊子を取り出した。ふたりの仮面ライダーが肩を組んでいるカッコいい表紙で、何度もポケットから出し入れしたのだろう、あちこちこすれて角は丸くなっていた。
表紙の左上に「冒険王」と見え、『冒険王』のふろくだな、と自分は思った。
だが買ったばかりの『冒険王』10月号(9月3日頃の発売)にこんなふろくはついてなかったし、振り返っても記憶になかった。
そういやこの10月号、まんが「仮面ライダー」(すがやみつるのコミカライズ)に子供たちのライダー隊が出てきていたっけ。なるほど、このタイトルはあれのことなんだ。ものすごい最新だ、と思った。

実はテレビ放映では少年仮面ライダー隊は既に8月に登場していたのだが、自分が居た静岡は放映が4か月遅れており、悲しいかな、ブラウン管を走り回る少年ライダー隊の活躍を静岡のちびっこが目にするのははるか先の話なのだった。

 

その最新のタイトルを同級生は普通にポケットから出した。
「これ、どうしたの?」と自分は訊いた。
「本屋行ったらくれた」と同級生はあっさり答えた。
「くれた?」
自分は思わず喉が鳴った。
これ、もらえるのか。

とにかく本屋へ行かなくちゃならない、自分は焦って考えた。でも近所の本屋は駄菓子屋と合わさってる店だからこういうすごいのはきっとダメだ。
子どもながらに知恵を絞り、町へ連れて行ってもらって大きな本屋できいてみた。

ところが妙だ。手帳をくれる店はおろか、どの店員も曖昧な返事をするばかりでその手帳のことをよく知らないのだった。
何軒も本屋をまわったがどこの本屋にも置いてない。
「ハンソク、かも」
或る店の店員がつぶやいた。
・・・ハンソク?あいつ反則で手に入れたのか。
小学生、切歯扼腕するもむなし。手帳入手は頓挫して、そのまま長い年月が経った。

***

さて30年近く過ぎたある日のこと、ヤフオクを見ていた自分は、あれっ?と思った。
見覚えのある横長の表紙が目に入ったのだ。
これ、何だったっけ。

同級生の顔はすっかり忘れたが、本屋を何軒もまわったのに雲をつかむ結末になってしまったミニ冊子のことは記憶の片隅に残っていた。
ふたりの仮面ライダーが肩を組み、左上に「冒険王」の文字がある。これに違いなかった。
状態がひどかったせいか、落札価格は安くて確か300円か400円くらいだった。

 

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30年ぶりの邂逅、中をきちんと見るのは初めてである。
裏表紙(表4)に『冒険王』の宣伝があり、遅まきながら気がついた。あれは「反則」でなく「販促」だったんだな。

 

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裏表紙

 

「仮面ライダー少年隊」という妙な名前もヤフオクの画像を見て初めて気が付いたことだった 。
そういえば、『冒険王』1972年10月号の「仮面ライダー」、すがやみつるのコミカライズの中でも「仮面ライダー少年隊」と呼んでいる。

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そのとき最新刊だった『冒険王』1972年10月号「仮面ライダー」

『冒険王』1972年11月号では「少年仮面ライダー隊」となっている

 

中をざっと見てゆこう。

表紙をめくると、見返しに「きみのおぼえがきカード」とあり、名前や生年月日、住所などを書き込むようになっている。これが隊員証の代わりだろう。
次は「仮面ライダー少年隊員の守る規約!」。ページをめくると「ライダー少年隊員と自転車」「ライダー少年隊員とペンダント」あくまで「ライダー少年隊員」と繰り返しているのが秀逸だ。

 

さて中身を見てまことに興味深かったのは、ちびっこのツボを押さえたその充実ぶりである。
「仮面ライダーの敵ショッカーとはなにか?」とあって、ショッカーの組織図。
次ページ「仮面ライダーの必殺わざ」では、わざ名を列挙。さらに次のページで「新サイクロンの性能」とあって、簡単ながらその機能が書いてある。

こんな情報、本誌の『冒険王』を読んでいればどこかに出てくるさ。でもその情報をポケットに入れられるとなったら話は別だ。みんなで「仮面ライダー」の話になったとき、すぐ取り出して見られるじゃないか。

そのあと「友だち名簿」「MEMO」と自由に書けるページがあり、「冒険王テレビ番組表」とつづく。テレビ番組表は「超人バロム・1」「変身忍者嵐」「快傑ライオン丸」など『冒険王』連載作品の放映時間割だ。そして「仮面ライダー」の主題歌、最後にカレンダー。表紙、裏表紙合わせて合計20ページ。
「カレンダー(昭和47年~昭和48年)」は9月はじまりだから、おそらくこの手帳の配布時期は8月下旬、夏休み終わり頃だろう。

販促用のこの手帳が当時どのくらい配られたのかは不明だが、ちびっこのかゆいところに手が届く内容で、もしあの頃手に入れていたら間違いなく毎日ポケットに入れて持ち歩き、ぼろぼろにしていたに違いない。そしていつの間にか無くしていたに違いない。

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さてここからは、ちびっこの幻を射程に捉えた大のおとながどうしたかという話である。
ヤフーオークションで最初に落札した『仮面ライダー少年隊手帳』は傷みが相当激しかった。その後まんだらけの店頭で見つけて一、二度買った。それから再びヤフオクですごく綺麗なのを手に入れた。いまは、いちばん良いやつ、二番目の、三番目の、という感じで、いろいろ分けて仕舞ってある。

あの夏休み明け、小学生の自分が探し続けるうちどんどん訳が分からなくなっていったミニ手帳が、ネットの力や何やらで、たまにちらっと浮上する。そしてびっくりするほど綺麗な状態のものがある。
不思議なことだ。子供なら普通ぼろぼろにしてしまうのが、こんなに綺麗に残っていて、自分の前に現れる。まるで奇跡のようだと思う。
昔のモノを前にしてときどき夢をみている気持ちになるが、そう思うのはこのミニ手帳がダントツである。

 

 

 

 

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