2023年2月、「シン・仮面ライダーチップス」が発売された。1~48番までのシン・仮面ライダーカードが1袋につき2枚ついている。庵野秀明監督の映画「シン・仮面ライダー」公開に先がけたビッグな企画商品だ。
さっそくカードを求めてコンビニ行脚を開始した。足を棒にして歩き回り、見つけたチップスをばんばんまくり、コンプリートを7セット組んでラッキーカードも引き当てた。大変充実したちびっこ活動だった。
だが映画公開とともに事態は急変する。映画の入場者特典カードにチップスカードの続きとおぼしき番号を発見したのである。
大変だ、こっちもコンプリートせねばチップスの通し番号が完成しないではないか。
必死の劇場通いでなんとかコンプリートは果たしたが、安堵する間もなく第2弾の特典カードが投下され、さらに翌週第3弾が、またまた翌週新たなバージョンが降り注ぎ、ちびっこ魂をもみくちゃにしながら爆撃はいつ果てるとも知れず続くのであった。
以下、詳述したい。
Contents
1 劇場配布版カード第2弾集めに奔走、生身の仏を駆り出すの巻
チップスカード1~48及び、劇場入場者特典カード第1弾49~58蒐集の経緯は前稿に譲りたい。
劇場版2弾は4月14日からスタートした。第1弾と同じく1名につき1パック2枚入りで全10種類である。
翌週4月21日から第3弾、こちらは全5種で1パック5枚入り。
さらに4月28日からは庵野監督「エヴァンゲリオン」とのコラボカードが1パック1枚全5種類で登場する。
ちなみに第2弾と第3弾には、第1弾同様出演者の肉筆サイン(直筆ではなく印刷)入りレアカードが混じっている。だが過去の出方からすると、すべて集めるには朝から晩まで映画を見続けねばならぬ。しかも上映館は歯の抜けたように減ってゆく一方だ。
とりあえず肉筆サイン入りは無理やり念頭から外したが、この先コンプリートはどんどん困難になるだろう。早々と配布終了などされたらどうしようか。焦った自分は友人S氏に泣きついた。
友人S氏、マニア界に深く潜伏し、煩悩の輩を救済しながら濁世を歩む尊きひじりである。このときすでに他の知人につきあってこの映画を8回鑑賞済みであった。自分は仏のようなS氏を駆り立てて、もはや数少なくなった通し上映をやっている新宿バルト9へ向かった。
S氏につきあってもらい、一緒に2日で5回鑑賞、第2弾を10パック手に入れた。だが揃わない。出たのは全10種中8種まで、おまけにレアカードはゼロである。
いや負けるものか。そのあと別の映画館にヘソの曲がりかかった妻を投入し、2パック4枚ゲットした。ここでやっと劇場版カード第2弾をコンプリートした。
とりあえずダブりがたくさん出ているので、2セット目を狙って翌日一人でまた見に行った。その2枚で2つめのコンプリート完成。通し番号は59~68である。これで1番から68番まで2セット揃ったことになる。4月20日の木曜日であった。
劇場版第2弾10枚(通し番号59~68)
2 映画「シン・仮面ライダー」について思うこと
ここでつらつら考えた。
1972年、仮面ライダースナックが一世を風靡した当時、おまけのカードだけ取ってスナックを捨てるちびっこが続出して大きな社会問題となった。
数十年前、通し番号の威力を天下にしろしめた仮面ライダーカードは、この2023年、再び「おまけのカード」という宝具となって次々と投下されている。マニアの劇場通いを引っ張りつづける商魂たくましい大人たちは、この映画をどう考えているのだろうか。
庵野監督の特撮は「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」に続いてこの「シン・仮面ライダー」で三作目となる。面白かったと言う者とそうでもないと言う者と、評価は二分されるようだが、自分は非常に面白かった。
原作オマージュのストーリーやキャラのつくり方など多様でこまかなこだわりは言うまでもないが、とにかく魂を奪われたのは、戦闘シーン、バイクのシーン、そしてテーマ曲の神がかり的な使い方である。これは見るたびに胸が熱くなり、その都度少し泣きそうになる。われわれの本能に刻み込まれたこの「仮面ライダー」の精髄を、庵野という時代の寵児が令和の形で再現してくれたのは何たる幸福であることよ。
自分もS氏もちゃんと映画を観る性質で、カードだけ貰って劇場を後にすることは無いのだが、マニアからとことん搾り尽くすがごときこうしたカードの爆撃は、実際、この映画の幸福感に対していかがなものだろうか。
劇場で購入したカードアルバム(おもてと裏)
3 劇場版第3弾で思わぬ数字を見るの巻、シン・仮面ライダーチップス第2弾発売
さてその週末、自分は推し活で広島へ行ったが、帰途、所用のため大阪で降り、ここでも劇場に足を運んだ。新たに登場した劇場版第3弾を入手するためである。
整理しよう。
シン・仮面ライダーチップスのカードは1~48番。
劇場配布カード第1弾10種で49~58番。
さらに劇場配布カード第2弾10種で59~68番。
以上ここまで揃っている。
劇場配布カード第3弾は全5種。通し番号があるなら69~73番となろう。これは1パックに5種類全部入っているから気楽なものだ。ラッキーならすべてがレアカードというケースもあるらしい。この第3弾は裏が透明な袋だった。
裏返してぞっとした。
121という数字が見えたのである。
これは何だ。69~73ではないのか?
ぞっとした121
さっそくS氏に連絡をとると、スマホの向こうから氏の快活な声が響いてきた。
「シン・仮面ライダーチップス、第2弾の発売が発表されてるらしいっす」
慌ててネットを見た。チップスカード第2弾は最初のシリーズ同様全48種。劇場版第2弾のあとにこの48を足すと69~116番。そこに劇場版第3弾の5種を足して121。・・・合っている。
なんときのう24日から東日本エリアで「シン・仮面ライダーチップス」第2弾が発売されていた。売っているのは中部地方まで。ぬかった、ここは大阪。まだ販売されていない。
第3弾・肉筆サイン入りレアカード
4 劇場版エヴァバージョンをゲット、チップスカード第2弾はどうにもならん
次の日また映画を観てカードをゲットした。そのあと移動し、地方での仕事のかたわらホテル周辺のファミマを7軒まわって「シン・仮面ライダーチップス第2弾」をさがした。影も形もなかった。だが明朝の飲み物を買って帰ろうと最初のファミマに入たとき、さっきなかった棚に見慣れぬ仮面ライダーチップスが積んであった。これが初めて見る「シン・仮面ライダーチップス」第2弾であった。
あわてて在るだけまくり、12袋でカード24枚を手に入れた。だぶりも出たので集まったのは20種。翌日も地方駅のコンビニを10軒以上探し、さらに地元に移動してしらみつぶしにまわったがゼロだった。
ニアミスは一度あった。職場近くのファミリーマートで棚が2列すっからかんになっていて「新発売!シン・仮面ライダーチップス」の貼り紙があったのだ。ついさっきまで確かにブツが積まれていた証拠である。
そんなわけでチップスカード第2弾がどうにもならぬまま、4月28日、劇場版カードの新バージョン「エヴァンゲリオン」とのコラボカードが登場し、自分は粛々と劇場へ向かった。本郷猛の格好をした碇シンジ、緑川ルリ子のコートを着た綾波レイ、一文字隼人の姿の渚カヲル、ハチオーグになったアスカ、緑川イチロー(チョウオーグ)に扮したマリ。
最初に綾波レイが出た。
裏を見る。ここにもやはり通し番号がついている。
なんというか、東映・カルビー軍団の強固な意志を感じる。
5月1日の月曜日、ゴールデンウィークで名古屋からスーフェスに上京した友人とS氏、堤哲哉氏との4人で映画館へ行った。マリがだぶってアスカが出ない。翌日ひとりで行ってシンジくんをゲットした。
劇場版エヴァンゲリオンコラボカード5枚(通し番号122~126)
5月3日はまんだらけのイベント、大まん祭だった。S氏と一緒に大まん祭をまわり、午後、新宿のバルト9へ。いつもならふたりとも最後まで鑑賞するのだが、大まん祭もあるため最初のエヴァ特別編(一時期「シン・仮面ライダー」の前に10分ほど流していた)だけを観た。はたから見れば、仮面ライダーに興味ないエヴァファンの所業だが、本編を見ずに劇場を出たのはあとにも先にもこれ1回きりだ。3枚目のマリが出て、コンプリートはいまだ成らず。翌日ひとりで鑑賞し、ついに最後の1枚、アスカをゲットした。
これで劇場版エヴァンゲリオンバージョンは揃った。ちょうどカヲルとアスカのセットがメルカリで安く出ていたのでこれもゲット。コンプリート2セット目が組めた。ようやく劇場通いも完了だが、最終特集とかでさらにエヴァコラボのミニポスターを出しやがったためさらにもう一度観た。
5 チップスカード第2弾いまだ発見できず、ネットは高額箱売りの嵐
さて、残るは第2弾のチップスカードだ。
発売からひと月、もう何軒のコンビニをまわったかわからない。一向に見つからず時間ばかりが経ってゆく。S氏が関東中を、車でさんざんまわってくれたが、見つかったのは1軒15袋だけだった。今までと合わせても20種近く足りない。
チップス第2弾、最初と最後のカード
(左 69 本郷猛のつよさ
右 116 ありがとう!仮面ライダー!)
4月24日に発売されたこのチップス第2弾は、おそらく一瞬で店頭から消えたはずだ。
5月29日には関東も併せて全国で発売がかかるというので、その日をひたすら待ち、当日は満を持して探索に出た。まず自宅周辺のコンビニをファミリーマート中心に探し、そこから範囲を広げて50軒近くまわった。どこにもない。それどころか置いてあった形跡すらない。
アマゾンの定価販売はシステム障害のため6月5日に延期。定価は3000円ほどだが、見ると出ている出ている、既に入手した者が、おおよそひと箱5000円~9000円で箱売りしている。メルカリもヤフオクも箱売りの嵐だ。
第1弾のときも個人の箱売りはあったが、そのときはカードのばら売りが目立ち、ここまでのものはなかった。
その後1週間、コンビニやスーパーまわりを続けたが店頭では発見できなかった。1日平均30軒以上はまわったから、この週だけでのべ200軒はまわっている。
それだけまわっても出ないのは、タイミングが合わないのか、そもそも自分のまわる店舗には入荷していないのか。それとも・・・。
あれだけネットに箱売りの出品が多いのを考えれば、コンビニやスーパーで店頭に並ぶ前に箱買いしまくっている人間・・・それも極めて業者に近い・・・がいるはずだ。カルビーマルシェやアマゾンの定価販売は、購入できても1人1箱。何箱も出品はできない。
6 終戦。チップスカード第2弾コンプリート、ここは一面の焦土である
6月5日、ついにアマゾンで3036円の箱を購入した。妻やS氏はじめ知人にも頼み、メルカリでも安いのを買って都合6箱手に入れた。
先に届いた4箱を開けると、既に手元にあったカードと併せて3セット組めた。ついでに第2弾のラッキーカード、115番と116番の2種を両方ともゲットした。
ラッキーカード115、116
終わった。
2月はじめから4カ月にわたる、長い長い戦いだった。
コンビニ、スーパーの店頭確認は1000回以上、それでも第2弾のチップスを店頭で見たのはただの1度きりだ。
映画を観ること26回。終映の6月4日を控えて最後の1回を観に、大雨の中静岡の劇場へ行った。同じ映画を劇場でこれほど観たのは今までの人生で一度もなかったし、おそらく今後もないだろう。この先のカードの展開をあれこれ予想する声もかまびすしいが、そうならないことを切に祈りたい。
野望に燃える東映&カルビー軍団の絨毯爆撃を浴びてここは一面の焦土である。
ひろびろとした焼野原に仮面ライダーごっこの声がものさびしく響いている。