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池田誠の「今週の逸品」第25回~『週刊少年マガジン』1978年8月15日増刊号

今週の逸品は『週刊少年マガジン』1978年8月15日増刊号

表紙には「10大人気漫画家読み切り傑作集」とあり、梶原一騎・川崎のぼる、松本零士、矢口高雄、山上たつひこ、横山光輝、永井豪、石森章太郎、ジョージ秋山、赤塚不二夫、水木しげるの名前がある。そうそうたるビッグネームである。

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先日まんだらけでこれが385円で売られているのを発見し、あまりの安値に「許せん」と言って購入した。税抜きで350円。もとの定価は370円だからヴィンテージなのに定価より安いのである。確か以前もまんだらけで500円位で発見した。その時も許せんと言って即購入したが、それよりさらに下がっているとは何事ぞ。
給料は上がらず、記念作品号は値が下がる。日本沈没もはなはだしい、憂うべきデフレ現象ではないか。

1 『週刊少年マガジン』1000号前後に掲載された新作シリーズを網羅

この原稿を書いている2023年1月現在、『週刊少年マガジン』は通算3790号を越えている。その1000号記念号には「サイボーグ009」の、なんと新作が掲載された。
実はこの前後の『週刊少年マガジン』は、それまでの記念碑的作品に連なる新作を毎号掲載し、栄えあるこの節目を盛り上げていた。今週の逸品1978年8月15日増刊号は、その作品群を網羅したものである。

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それぞれの内容を駆け足で見ておこう。
梶原一騎原作・川崎のぼる「巨人の星外伝それからの飛雄馬」、1966年~1971年連載「巨人の星」の続編である。ちょうどこの時期、『週刊読売』誌上で「新巨人の星」が同コンビによって連載されていた。
ストーリーは、「巨人の星」ラストで姿を消した飛雄馬が「新巨人の星」で再登場する前、かつての恋人日高美奈をしのんで宮崎を訪れ、その地の球児を育てるというもの。飛雄馬の姿は「新巨人の星」の姿に近い。KCコミックス「新巨人の星」最終巻の巻末におさめられている。

次に永井豪「キッカイ対オモライ」、1969年~1970年連載「キッカイくん」と1972年連載「オモライくん」が、共通の登場人物冷奴先生をめぐって対決する。ふたりのケンカがキッカイ一家対オモライ一家の戦争に発展、最後は手のつけられない怪物同士の戦いになってゆくのがいかにも永井豪。

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ジョージ秋山「大対決ドンドン・パット」、1967年~68年連載の「パットマンX」と1969年~1970年連載の「ほらふきドンドン」、それぞれの主人公パットマンXとドンドン和尚が対決する。最後の最後まで刃を交えることなく、すべて想像の中で戦って帰るシュールさもまたジョージ秋山らしい。

水木しげる「墓場の鬼太郎」は、1965年~1969年連載作品の新作で、子供に自殺させようとする海坊主先生との対決。

石森章太郎(石ノ森章太郎)「サイボーグ009幻影島篇」、1966~67年連載「サイボーグ009」の新作で、かつて009に研究所を破壊されたことを恨む悪魔の研究者フリードキンの復讐譚である。

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赤塚不二夫「天才バカボン」は、バカボンのパパの姪の流行歌手が狂ってしまう新作だ。「天才バカボン」は最初は1967~1969年、そして『週刊少年サンデー』の連載をはさんで1971~1973年、1975年、1976年と断続的に連載されていた。

山上たつひこの新作ギャグマンガ「ゴムゴム」。山上は『少年マガジン』誌上では1969年、1970年と劇画タッチのシリアスな漫画を描いてきたが、『少年チャンピオン』誌の「ガキデカ」大ヒットで開花したギャグセンスをここで見せている。

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どれも『週刊少年マガジン』1000号の前後に掲載された特別作品であり、それぞれの漫画家がそれぞれのやり方で作品を振り返り、或いは新しい自分を発揮している。永井豪、ジョージ秋山による複数作品の対決、「009」で敵側の思いを描く石ノ森、転がる石であり続けるギャグ漫画、すべてが素晴らしい。『週刊少年マガジン』が1000号の節目で送り出した新作シリーズ、それらがこの増刊号で一気に読めるのだ。

なお、矢口高雄の「釣りキチ三平」、横山光輝「時の行者」は当時『月刊少年マガジン』で連載中。松本零士「魔女天使」はそれまで不定期連載だったのが、このあと『月刊少年マガジン』で新連載された。ここでは第1話から第5話まで全129ページを載せている。

2 大きな目玉「保存版ファイル大特集 手塚漫画300作品全カタログ」

さらにこの増刊号の大きな目玉となっているのが、保存版ファイル大特集「手塚漫画300作品全カタログ」だ。
巨匠手塚治虫の漫画300作品を選んで、(選んだといってもほとんどだが)、その図版、初出、概要を記している。図版は単行本や別冊付録の表紙、時には漫画のコマも。概要もあらすじだけではない。テレビ化、他誌で第2部連載などの情報もある。

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ほかには新人漫画家たちの読み切り作品が6本。
新人作家以外すべて再録とはいえ、この一冊の奥ゆきと濃厚さ、これだけ入っていてまんだらけで税込み385円。
苦しゅうない、見たらまた買ってしんぜよう。

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