池田誠の「今週の逸品」22 『少年画報』1967年2月号  

今回の逸品は『少年画報』1967年2月号。
「マグマ大使」第2部・ブラックガロン篇の最終回が載っている。
内容的にも節目の号だが、いちばんの目玉はとじこみの「マグマ大使」のすごろくだ。
だがこのすごろく、大変なしろもので、切り取るとカメレオン並みに気配が消える。
しかもちびっこなら切り取らないはずがない素敵さなのだ。

この号を手に入れたのはもう四半世紀も前になる。
その時このすごろくが抜け落ちていることに自分はまったく気づかなかった。
とじ込み・切り取りはいつも目をらんらんと光らせてチェックする切り取りパトロール隊の自分が、これは我ながら呆れ果てるほど気づかなかったのだ。
無念の思いもこめて、今回はこの逸品を紹介したい。

1 『少年画報』の顔となった「マグマ大使」

「マグマ大使」は『少年画報』1965年5月号~67年8月号に連載された。手掛けたのは巨匠手塚治虫。連載開始後すぐ表紙を飾り、以後約2年間ずっと同誌の顔でありつづけた。
1966年7月4日からは実写版特撮ドラマが放映され(フジテレビ1966年7月4日~1967年9月25日)TV特撮ドラマ初のカラー作品としても記念すべき存在となった。ちなみに「ウルトラマン」放映が1966年7月17日からだから「マグマ大使」はそれより半月前のスタートとなる。

さてこの『少年画報』1967年2月号、
これは先述した通り、第2部・ブラックガロン篇の最終回にあたる。
とじ込みふろくも特集も「マグマ大使」大充実の1冊だ。

ちなみに「マグマ大使」は3部構成で、第1部ゴア篇、第2部ブラックガロン篇と続いたが、第3部サイクロップス篇は手塚多忙のためピンチヒッターが起用され、井上智、福元一義の代筆で同年8月号で完結した。
なお、単行本化の際、手塚が自分の手によらないサイクロップス篇を一緒に収録したがらなかったため、第3部は単行本に収載されなかった。

2 『少年画報』1967年2月号のふろくと特集

この号のふろくや特集を見てみよう。
まず巻頭に「バットマン」のスピードくじ、そして「マグマ大使」の口絵がある。
2色特集「写真で見る!テレビ大怪獣図鑑」、これがすごい。
「マグマ大使」「ウルトラマン」「ウルトラQ」、米TV映画に登場する怪獣や宇宙人を、ふんだんに写真を使って解説している。

『少年画報』は、子供時代の自分が小遣いをためて初めてひとりで買った月刊誌だった。
だがこの1967年段階はまだ自力で買える余裕もなく、その後もおおむね本屋に並んでいるものや友達が持っているのを指をくわえて見ていることが多かった。

そんなわけで、おとなになって初めてこの号を手に入れたときは嬉しかった。
さっそくちびっこの荒らしたふろくやページはないか、念入りにパトロールしたが蹂躙の跡は見当たらない。いたずら書きもされてない。「写真で見る!テレビ大怪獣図鑑」などはちびっこがまず切り取って持ち運びそうなページだが、ここもしっかり残っている。よし。
当時の月刊少年誌は、メインのまんがは本誌で少し読ませてあとは別冊ふろくで読め、というパターンが多かったが、自分はこの号の別冊ふろく『少画コミックス』も入手済みだったため、本誌を手に入れ、まさに望月の欠けたることなき心境であった。
(この号の別冊ふろくの内容は「マグマ大使」「怪獣王子」「怪物くん」「どろんこエース」)。

3 すごろく「『マグマ大使』大作戦」発見

さてその後、2000年の終わりごろ、メトロポリスの本間氏に誘われて『少年画報大全』の制作にかかわった。

自分の担当は1963年以降の範囲だった。特に66年67年は特撮系の口絵やグラビアが多いから、どの図版を入れようか迷ってしまう。楽しく思案しながらこの1967年2月号を眺めていると、例の「写真で見る!テレビ大怪獣図鑑」のページの前に、何か大判の紙がとじこまれているではないか。

見て驚いた。
「『マグマ大使』大作戦」と書いてある。

どう見てもとじ込みふろくだが、こんなふろくは見たことがない。
あわてて目次を見ると、確かに「マグマ大使大怪獣作戦」とある。表紙にも「大人気『マグマ大使』の大怪獣すごろく『マグマ大使』大作戦」と載っている。
だがふろくの記載のところには入っておらず、「すごろく」といった表記もない。
タイトルの上に「愛読者50万人プレゼント」とあるのにようやく気付いて、合点がいった。
要は「ふろく」でないプレゼントのくくりだったのだ。

ひらいてさらにびっくりした。
オール4色の写真をふんだんに使って、すごろく、マグマ大使、モル、ガム、アース、マモル、ゴア、といったレギュラー勢はもちろん、怪獣もフレニックス、テグロス、パドラ、ストップゴン、ドロックス、アロンと代表的なものがずらりと顔を揃えている。その見事さ、豪華さといったらない。

さっそく『少年画報大全』でそのすごろくを紹介したが、内心のショックはでかかった。
自分は完本を買ったと思って浮かれていたのに、とんでもない。一番の超目玉に気づいてなかったのだ。

目次で前後を数えると、とじこみは73ページ~80ページにあたっている。
これほどページ数をとりながら、きれいに切り離すとまるでそこには何もなかったようになる。
なんたることだ。
こんなのちびっこが切り離さないはずがないじゃないか。
もしかしたら、この世に普及している『少年画報』1967年2月号のほとんどは72ページから81ページに飛んでいるのじゃないだろうか。

さてその後、切り離された「マグマ大使大怪獣大作戦」が単体で売られているのを発見、入手した。本誌の該当部分にさしこんでみると、あらぴったり。

追ってすごろくが切り取られていない完本も手に入れたが、どうしよう、「さしこんで、あらぴったり」にハマってしまった。
今もときどき「あらぴったり」をやっている。

 

 

 

 

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