今回の逸品を手に入れたのは、2015年12月25日(金)、アイドルグループももいろクローバーZの「ももいろクリスマス2015」3日目だった。場所は軽井沢スノーパーク、なんとスキー場のゲレンデだ。
いや寒かった。でもラッキーだった。以下おおむね愚痴とのろけのこの記事にしばしお付き合いいただければ有難い。
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ここで「ももいろクリスマス」というイベントについて、少々説明しておきたい。
ももいろクローバーZのクリスマスイベント「ももいろクリスマス」(通称「ももクリ」)は、2010年12月24日、日本青年館でのももクロ初の単独ホールコンサートから始まった。
翌2011年のももクリは、さいたまスーパーアリーナで開催され、観客数は前年の10倍に跳ね上がった。さらに次の2012年は同じさいたまスーパーアリーナ2DAYS。ももクロの勢いの高まりを感じさせた。
2013年、ももいろクリスマスは西武ドームだった。
ホールより規模拡大したドームライブといえば、グループの躍進を思わせる。
だがここで特に上方の席に座った観客は、体感する気温が比較的吹きっさらしに近いことを発見してうろたえた。なにしろ東京ドームやナゴヤドームと違い、西武ドームは自然一体型、つまり、壁がないのである。
攻めている。
われらのももクロは果敢に攻めている。
ついてゆかねばならない。
それが2013年のももいろクリスマスだった。
翌2014年、ももクリは再びさいたまスーパーアリーナ2DAYSに出戻った。さすがのももクロも真冬の壁なし会場はキツかったのだ。そう考えて自分は正直ホッとした。だが驚くまいことか、ももクロは、なんと翌年のももクリに真冬のゲレンデ3DAYSを選んだのだ。
そんなわけで2015年12月25日、軽井沢スノーパークのももクリ3日目に参戦した。
吐く息が白い。視界には雪山と雪原が広がっている。
そういえば初日の23日はアンコールのとき雪が降ったと聞く。
こうなると埼玉の壁無しドームどころの騒ぎではない。いやむしろ西武ドームが懐かしい。あっちはせいぜい3~4度。これは氷点下の世界である。オールスタンディングで2時間前に入ったが、うっかり装備を忘れた足先がすでにこごえている。しかも足元は平地でない。さすがのスキー場、養老天命反転地のごとく斜面に体勢が崩れてゆく。
いったいももクロはどこまで攻めるのか。いや攻めすぎじゃねえかユーミンだって苗場はプリンスホテルだろう。隣の男性はさっきから呪いのように寒さを嘆いている。
だがまごうかたなく着ぶくれして現れたももクロメンバーを見て、隣の男性も自分も驚き、歓喜した。近い、近いのだ。うりゃ。
そこで以下はのろけみたいなものだが、その日はいろいろラッキーだった。
まずチケットがよかった。Aブロックの100番台で、前から2~3列目に位置できていた。
ももクロのバックでは、スキーヤーたちが華麗なパフォーマンスを見せていた。アンコールは、メンバーたちが横のゲレンデからソリで滑り降りてくる趣向。それらの姿もよく見えた。
次に生写真が幸運だった。ゲレンデでひろげるわけにもいかず相当控えめに買ったのだが、中には百田夏菜子のコメント入りサインつきが入っていた。
さらに最大にツイていたのは、ファンクラブの抽選会だった。抽選会では後にも先にも当たったためしがない。だがその日だけは手ごたえが違った。みると2等、これが今回の逸品の「全員サイン入り星型ペンライト」だ。うりゃ。
振り返ればあの年、ももクロは何かと不運つづきだった。
その前年の2014年、ももクロは、かねてから念願の国立競技場コンサートを実現した。夏の恒例ライブは国内最大級のスタジアム、日産スタジアム2DAYSを果たす。集客の次元があがって、ずっとめざしてきた大バコでのライブを達成し、目標に一区切りついてしまったのが2014年のももクロだった。
2015年、ももクロは実験的な試みを繰り返し、福岡太宰府での男性限定「男祭り」開催で、女性人権団体からのクレームを浴びる。そしてこの年、紅白歌合戦に落選した。
ももいろクリスマスが軽井沢ゲレンデ3DAYSで開催されたのは、この年末のことだ。
どこまでついてこられるか、ファンを振り切るがごとき極寒の会場設定は、実験と挑戦をくりかえしたももクロ2015年の、攻めの姿勢のきわまったところにある。「全員サイン入り星型ペンライト」をみると、あの年のももクロを思い出す。
なお、このときライブビューイング会場はビターとスイートの2種類に分かれ、ビターの部屋には冬ながら冷房が入ったという。