仮面ライダーカード という価値をつくる 14局46番 / 堤哲哉 2

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堤さんはテレビを通して全国に呼びかけた。
「仮面ライダーカード、14局46番を探しています。持ってきてくださったら10万円で買います」
カード1枚に10万円。
それは当時およそ信じられない法外な値段だった。

堤さんは語る。カードやブロマイド、いわゆる紙モノはコレクション関係では安かった。
「今から30年前、ぼくが23~24歳くらいの頃、よく下北沢のなつかし屋とかオムライスとかヒーローズとかに行ってカードを見てたんだけど、紙モノはホントに安かった。
「ヒーローズでは、店のおじさんに認められるまでは、入店するのに100円とられるんですよ。ぼくらみたいなカード系のマニアが行って、長時間店でじーっと見て、数百円しか買わない・・・だからカード系はうとまれたんだな」
或るときヒーローズで珍しい500番台の仮面ライダーカードを3枚見つけ、速攻で買おうとしたら、それだけでは買えなかった。
「その場にある36枚全部で1万5000円なら売ると。良いのも悪いのもまとめて買えと。ライダーカードの値段なんてあって無いようなもので、要は1万5000円くらい落としてもらわないとめんどくさい、そういう売り方でした」

 

呼びかけに応じて、ついに所有者が現れた。
しかも二人!
堤さんは二人にそれぞれ10万円払って、その両方を買い取った。
初めて見た14局46番は、予想通りラッキーカードだった。

 

 

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だが堤さんは、そのとき別のことでもドキドキしていた。
14局41番を持参してくれたひとりが、アルバムに他の珍しいカードもいっぱい入れていて、そちらも買い取りたくてしょうがなかったからだ。

ドキドキするのはさらに理由があった。
相手がカードを入れていたのが、よりによって例の仮面ライダーアルバムの中でも、最もレアでいわくつきのビニール仕様のものだったのである。そこに入れておくと、カードがビニールにぺったり貼り付いてダメになるという悲劇を生み、しばしばカードもろとも捨てられてしまったアルバム。
横目で見ながら堤さんは手に汗握った。

 

番組終了後、堤さんは早速その相手に交渉し、カードとそのアルバムをまとめて50万で買い取った。奇跡的なことにカードは一枚も貼り付いていなかった。
「聞けば持ち主がしょっちゅう取り出して眺めてたんだって」

カードの状態を守る方法が、それを放置せず頻繁に取り出して眺めることであったというのは深い話だ。その所有者もまた、カードを日々愛していた人だったのだ。

 

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ここで、このときの堤さんの立ち位置を知るために、仮面ライダーカードの研究史を少々振り返っておこう。
最初期のバイブルとされた同人誌が、いまわたしの手元にある。

「レッツGO!ライダーカード」
奥付を見ると昭和60年(1985年)、300部限定。
発行は東映作品研究会。責任者は岡山の藤井政志氏。

これは1~546番までのライダーカードすべて、おもての写真と裏の解説文のコピーを載せた初めての本である。
他にラッキーカード、カードアルバム、カードの封入袋やアルバムの封筒のコピーまでついている。カードの写真がどこから取られたものかも、本編と照らし合わせて出来る限り確認し、補足解説ページでは本編一話あたりの枚数も示している。
まだ14局、25局の区別もなく、41、46番はすべて25局版で掲載しているが、同一番号での異種カードの存在も載せ、ゴシック体と明朝体の文字があることやカード裏の右下にある数字にも言及するなど、その後のライダーカード研究がたどった道筋を指し示す一冊となっている。
PCに画像を取り込むなどといった芸当は夢のまた夢、まだワープロも一般化していない時期であった。手書きの編集後記の文章からは、これを形にするまでの血のにじむ苦労が窺われる。敬意をこめてこの文章をここに載せたい。

・ふぅー、何とか終わったです。問題は仕上がった時の再現性のみだが。・ホワイトスクリーンを、カードの下に敷いてコピーしています。(表のみ)それを原稿に貼るという方法で。・裏が、たまにかすれているものがありますけど、今一度コピーする気にもならんのでそのままです。・理想は、オールカラー!でしたが、それもままなりませんので。ここまでやれば本望です。スナックの空袋とダンボール箱が揃えば完璧だ。・では、お楽しみください。・発行が遅れてごめんよ。

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「レッツGO!ライダーカード」の後、1986年、講談社が「仮面ライダー怪人大全集」を出版した。メジャー誌で仮面ライダーカード全体が紹介された最初の本であったことは、言っておかなくてはならない。

546枚のカードが白黒で並べられ、解説の要旨が載せられた。

 

だがそのとき、堤さんやその周囲のマニアたちは、ちっとも嬉しくなかった。
この本のカードを紹介する内容の質に、満足がいかなかったからだ。

 

 

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