ももクロサイン入り生写真コレクション/ 池田誠 3

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さて、ももクロは、2012年あたりからライブ会場が急激に大きくなり、動員数が増えて、サイン率は低下した。2012年後半、マネージャーが「生写真25セットに直筆サイン1枚の割合」とTwitterで呟いたらしい。
池田さんの感覚だと、2013年夏は20~30セットに直筆サインが1枚の割合。冬以降は50セットに1枚くらいで今に至るという。

「通常は10セット買った場合、5分の1の確率でサインが1枚入ってるんですが、実は計算上、10セットを5回買っても3~4人にひとりは1枚もサインが出ないのです。5の5乗分の4の5乗なので3125分の1024が外れの可能性。なお、10セットを10回買っても、9人に1人は1枚も出ません。これは5の10乗分の4の10乗だから」
算数小僧の池田さんは計算する。

ここで今までの戦績を訊くと、ラッキーだったのは3セット買っただけでサインが1枚入っていた経験が1回、10セットで1枚というのが3回あり、逆に50セット買って0枚が2回、100セットで0枚のときもあったという。
「100セットォ!?」
わたしは思わずこぶしをかためて、池田さんを殴った。
「甘んじて受けます。どうぞ」
おとなしく頭を下げるので、これ幸いともう一発殴る。

池田さんは小さい声でもそもそ言った。
「売る人から束をまとめて渡してもらえるなら、だいたい平均値でサインが出るのです。それがちょっとずつバラバラに持ってこられると、1枚も入ってない確率が上がるのです。通販で買えばほぼ確率どおりなんだけど、やっぱりその場の物販で買いたいし」
「どうして?」
「そりゃ高揚感が違いますから!」池田さんは目を輝かせた。
「直筆サインですよ?本人が書いたんですよ?それを手にして、そのあとすぐライブですよ?めちゃくちゃ盛り上がるってもんでしょう」
池田さんはついうっかり、早くも元気づいてしまう。

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俺の藤井シリーズ

「俺の藤井」は、スターダストプロモーション所属の女性アイドルグループが年始に勢ぞろいするイベントである。ももクロはこれに2016年まで参加している(2018年現在)

2014年と2015年にはこのイベントのみの公式生写真が販売された。
2014年は、いろいろなチームのメンバーがまざったスナップ写真。
2015年は「藤井と嫁の7日間戦争」という7日間のイベントで、6日目にグループの枠を横断したユニットやソロでベストテンを決める「俺のベストテン」がおこなわれ、特別な生写真が販売された。
それぞれ単体の写真が、ももクロ5人各2種、私立恵比寿中学8人各2種、チームしゃちほこ6人各2種、たこ焼きレインボー5人各3種、計53種類を5枚1セットで販売。直筆サインはおおむね5セットに1枚で、サイン率は高いがお目当てが出るとは限らない。

「ももクロを出すのは超大変。一番前に並んでもループは最大5回くらいしかできなかったと思います」
「ループって何?」とわたしは訊いた。
「並び直しです。1人5セットまでしか買えないから、また列の後ろに並んでもう一度買うのです。ちなみにぼくはその日3回ループしてサインを4枚出したけど、どれもももクロじゃなかった。最後の頃はひとり3セットまでしか買えなかったし」
池田さんは慨嘆した。
「ああ、あの日きみを連れてゆけばよかった。ふたりで並んだらももクロを引けたかもしれないのに」
なんたることかひどい発想を口走り、「でもいいの」と池田さんはアルバムをひらいた。
「これは交換で手に入れて、これは〇〇さんに譲ってもらって。ほら、いっぱいあるんですよ。こっちにも」
アルバムには七日間戦争の文字が入ったももクロのサイン入り生写真がずらりと入っていた。
「見る?」と池田さんはにこにこしながら言った。
「いや、きょうはいいです」
「見ろよォ」
ほえる池田さんを残し、わたしはとっととその場を去る。

 

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