『冒険王』 (少年月刊誌)をひたすら語る /池田誠 2

「それではこの号の巻頭から見てみましょう」

そう言って池田さんは別冊『冒険王』72年秋季号を大事そうにひらいた。

①デビルマン絵はがき
②口絵ポスター
おもてにサンダーマスク、裏に「映画怪獣大行進」(ゴジラ、ガメラ、ギララなど)
③テレビ怪人カラーカード(8ページ)
(仮面ライダー、超人バロム1、快傑ライオン丸、変身忍者嵐、計4枚)
④テレビ特報
(ライオン丸(7ページ)、仮面ライダー(8ページ)、
⑤怪人などの図解
バロム1(3ページ)嵐(4ページ)ライオン丸(4ページ)仮面ライダー(4ページ)、他に二色刷り(赤黒、青黒)
⑥帰ってきた映画怪獣(7ページ)
⑦映画・テレビニュース・・・天地真理初主演映画の情報
構成:特撮かアニメのマンガ化作品

 

「この中でちびっこが真っ先に切り取るのが①のデビルマン絵はがきと③のカラーカードです。別冊『冒険王』に付録はついていないから、この絵はがきとカラーカードが、いわゆるとじこみ付録ということになります。まずたいていのちびっこは本能的にここを切る。これは切られているのが当たり前と思うくらいでちょうどいい」
「え、そうなの?」
「そうです。逆に言えば、ここを切らないちびっこは真のちびっこではござらぬ。さってさんが、見た途端『いや~切られるものが切られてますねえ』と笑うのがこの部分です」
高橋さってさんの偉大な不動心に賛辞を送り、池田さんは言葉をつづけた。
「切り取りありとはたいていこのことを指しています。かつての所有者であったちびっこたちの、いわば本能の爪痕なのです」

 

 

 

「では次に、掲載されているマンガを見てゆきましょう」

超人バロム1(古城武司 原作さいとう・たかを)
仮面ライダー(すがやみつる 原作石森章太郎)
デビルマン(蛭田充とダイナミックプロ 原作永井豪)
サンダーマスク(長谷川猛とひろみプロ 原案上原正三)
変身忍者嵐(石川賢とダイナミックプロ 原作石森章太郎)
アストロガンガー(浅井まさのぶ)
快傑ライオン丸(一峰大二 原作うしおそうじ)

 

池田さんは語る。

「表紙のこれらのタイトルの上に「ぜんぶよみきり」の文字があります。当然でしょう。これらはすべて、特撮かアニメのマンガ化作品なんですから。この号のマンガには単行本未収録もあります。名高いサンダーマスクも、比較的地味なアストロガンガーも、とりたてて後世の展開はなく、単行本も出ていない。
ちなみに「仮面ライダー」のこの回は、「冒険王ver. 完全版 仮面ライダー」が出るまで、ずっと未収録でした。怪人は、すがやみつるのオリジナル「分裂怪人ムカデコンドル」。ストーリーがまた凝っていて、サイクロンが爆発してバラバラになっちゃう。しかも、ここの柱(ページ端の余白部分)のところで、「ゲル・ショッカー」という新組織名が登場するんです!」

「へえ、この号が初めてなんですか」

「いや、『冒険王』本誌のほうでは、10月号のマンガ化作品で新組織が登場し、11月号で組織名が示されます。そちらでは旧ショッカーから新組織ゲルショッカーへの移行劇がきちっと描かれるのですが、別冊では、柱でポンと謎の名前を投げかけるだけで、何の説明もない。ストーリーともつながりがない。こういう小間切れの情報の出し方が、おこづかいの少ない子供たちを翻弄していたのです」

池田さんはぷりぷり憤慨した。
子供たちの世界は、すでに金に左右されるシビアな情報化社会だったとみえる。

72年秋季号の収録マンガについて、池田さんはさらに言葉を続けた。

「「超人バロム1」は、2007年、「完全版」と銘打って、単行本未収録回をおさめた本が出版されました。しかしながらたったひとつだけ、この完全版に漏れたストーリーがある。それがこの72年別冊冒険王秋季号の回なんです」

「へえ、じゃあなおさらこの号は貴重じゃないですか」

わたしがそう言うと、池田さんは少々複雑な顔になった。

「いや、これにはぼくもいささか責任を感じるのです。実はぼくは以前、「ロボット&ヒーローCOMIXスーパーガイド」という本で、「バロム1」は最終回が単行本未収録だと書いたことがあったんですよ。「完全版」編集部はそれを参照したんじゃないかな。でも実際は最終回とこの秋季号の回の合計2話が抜けていたんです。ぼくはそのあと気が付いて、『ぼくらのヒーロー伝説』で訂正したんだけど、編集部はそっちは見なかったらしい。最終回は再録されたけど、この秋季号の回だけは漏れてしまった」

「それは先生、罪ぶかい」

「でもぼくのせいだけじゃないもん」

確かに・・・。編集部がウィキペディアを鵜呑みにしたという類だろうが、こういうのは少なくないようだ。

 

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