堤哲哉 /  キャラクターノート  4

 堤さんは語る。テレビ番組はどれが当たるかわからない。ノート会社はとりあえずどのノートでも出してみた。だがその膨大な山の中、観測の定点となる作品が二つある。……「鉄腕アトム」と「鉄人28号」。

 

 

 「鉄腕アトム」は19524月~19683月号、雑誌『少年』に連載された。テレビアニメは196311日~19661231日まで放映。横山光輝「鉄人28号」はアトムから遅れること4年、同じ『少年』誌上に19567月~1966年連載された。アニメ放映は19631020日~1966525日。

 先に述べたとおり、セイカは虫プロに食い込んでアニメ「鉄腕アトム」の版権を入手、その後虫プロの他のキャラノートも販売し、アニメに強いセイカの名を世に知らしめた。

これに対抗して「鉄人28号」を確保したのは昭和ノートだった。昭和の業績はこの鉄人ノートで飛躍的に伸びたという。

 アトムと鉄人のエネルギーはすべてにおいて群を抜いていた。両者とも十年以上漫画が連載され、実写を経て数年にわたるアニメ放映が展開された。「鉄腕アトム」のアニメ放映時、スポンサーの明治製菓がマーブルチョコにアトムシールを付けて販売し、大ヒットを記録したのは名高い。これに倣って「鉄人28号」は、グリコが鉄人ワッペンをおまけに付けて同じくヒットをとばした。

 アトムがまず先陣を切り、それを追う形で鉄人が勢力を伸ばした。キャラクターの浸透度は絶大であり、長期にわたる多様な角度からの検討が可能である。キャラビジネスを俯瞰する上で、このふたつのキャラクターは圧倒的な資源を持つのだ。

 堤さんは言う。アトムと鉄人を押さえよ。業界の流れはそこから見えてくる。

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 堤さんは、横山光輝もののトップコレクター今入重一さんの協力のもと、鉄人28号ノートを渉猟した。そして現在鉄人ノートは以下の表記まで確認されている。

 

 10円小サイズ(A5判) 「361-8 ¥10

 20円小サイズ(A5判) 「391-5 ¥20

 20円大サイズ(B5判) 「421-7 ¥20

 

 昭和ノートはごく初期と盛期のノートに通し番号を振っていた。鉄人28号の10円小サイズに与えたシリアルナンバーはNo.36120円小サイズにはNo.39120円大サイズはNo.421。8,5,7の数字はその弾数を示している。

 ちなみに通常1弾につき2種類ずつ発売したから、この時点で10円小サイズは8弾×2、計16種出されている。20円小サイズは5弾10種。20円大サイズは7弾14種。これらを合わせるとちょうど40種。以上、鉄人ノートは最低40種類は発売された。

 堤さんはそう計算し、付け加える。No.3618、No.3915、No.4217……これらの番号は1966年に発売されたはずだ、と。ヴィンテージファンにとって1966年は印象的な年である。それは一般的に、第一次怪獣ブームの年として知られている。

 

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 堤さんはいろんな昭和ノートを取りだした。ノートの表記の変遷から発売時期を特定できるというのである。 

「少年忍者部隊月光」

 裏表紙に通し番号があり、値段表記はない。おもての隅に小さく「63年」の印字がある。『少年キング』連載の吉田竜夫の漫画である。63年のこのノートは、通し番号あり、値段表記なし。

 

 

「谷啓の宇宙冒険 宇宙船XL5号」

 No.39 値段なし。通し番号があって値段がない。隅に63年の印字。

 63年の昭和ノートは通し番号あり、値段表記なし。なお、二桁の番号は通し番号を振っていた旧バージョンのスタイルだそうだ。

「ナショナルキッド」No.38 値段なし。

 これは古い。1960年~61年に日本教育テレビ系で放映された、東映の初特撮ヒーロー作品だ(196084日~61427日)。スポンサーにナショナルがつき、キャラの名前がそのままスポンサー名となっていた。二桁の旧ナンバーがあって値段表記なし。63年バージョンと同様のパターンであり、初期から63年までの連続を感じさせる。

「忍者部隊月光」

 「少年忍者部隊月光」は人気を博し、少年を青年にしてテレビドラマ化された。(196413日~66331日 フジテレビ系)裏表紙を見る。すると通し番号が消えている。値段表記も見あたらない。表紙の隅に小さい文字で「64年」。じんちゃく(人工着色)の写真は不鮮明だが、初回しか登場しない広川太一郎がうつっている点からも、放映開始時に発行されたものだろうと堤さんは推測する。

 64年のノートは、通し番号なし。値段表記なし。

  

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 さて、初期の昭和ノートは通し番号が入っていた。初期から63年あたりまでは番号があり値段表記はない。だが通し番号は忽然と消え、そののち復活する。表記の変遷を堤さんは追っかける。

 64年の頭ごろ、昭和ノートは通し番号を付けなくなった。この年は番号のあるものとないものが混在しているという。64年の通し番号付きバージョンを堤さんは見せてくれた。

 

「珍犬ハックル」(横) 

 「珍犬ハックル」はアメリカ、ハンナ・バーバラ制作のテレビアニメ作品。これは珍しい横長ノートである。

 表紙に1964年の文字。裏をみると№400と番号があり、値段表記はない。これは初期から63年までの「番号あり 値段なし」のパターンと連続する。だがこの後64年は、先に述べた「少年忍者部隊月光」の「番号なし 値段なし」パターンへ移行する。

 

(おもて表紙 右下部分)

The Jetsons

 アメリカのアニメ「宇宙家族ジェットソン」のノート。

  

 表紙の隅に小さく「1965年」の表記がある。通し番号はついておらず、値段表記あり。

1965年、昭和ノートは番号なし値段ありのパターンを採用した。

 

「宇宙少年ソラン」

 こちらは国産アニメ「宇宙少年ソラン」(196554日~1967328日放映)のノート。おもての表紙に1965年と表記。裏表紙には番号なし、値段あり。

 

 

 そして1966年。

「ウルトラマン」  3721 10円 通し番号あり、値段表記あり。

  ここでついに番号と値段の揃った形が登場する。鉄人ノート「No.3618、10円」「No.3915 10円」「No.4217 20円」のパターンである。これが1966年発売の昭和ノートの形態なのだ。

 

     

 

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 さて、1966年に戻ろう。

 この年、「鉄人28号」は三年半にわたるアニメ放映が525日に終わり、光文社『少年』の十年に及ぶ連載も終了した。  

 ちなみに昭和ノートで横山光輝「魔法使いサリー」の10円小サイズが見つかっている。堤さんは例によってノートの裏側を見せてくれた。サリーの通し番号No.362。これは鉄人10円小サイズNo.361のちょうど次にあたる。

(ちなみに昭和ノートのキャラものは、頭の番号がたいてい350400番台になっており、これが同社でキャラノートに与えられた番号帯だったのでは、と堤さんは考える。

 サリーが鉄人の次のキャラクターなのだ。19667月、「魔法使いサリー」は『りぼん』で連載スタートし(当初のタイトルは「魔法使いサニー」)、同年末にアニメ放映が始まった(66125日~681230日)。

 漫画やアニメのキャラクターノートは続いている。だが怪獣ブームはすでに身内を浸していた。196612日「ウルトラQ」放映スタート(~7月3日)、引き続き「ウルトラマン」の放映が始まり、爆発的なブームを引き起こした(717日~196749日)。

 堤さんは語る。鉄人28号ノートの3618、3915、4217……10円小サイズ8弾、20円小サイズ5弾、20円大サイズ7弾。1966年の形態をもつこれらの数字は、鉄人ノート最末期の弾数であると。昭和ノートを躍進させ会社のキャラノートを背負い続けてきた鉄人は、怪獣ブームに飲まれて消えてゆく。鉄人ノートはここが最終章なのだ。周囲には怪獣という暴風が吹き荒れていた。

 

 

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 2014年、今入重一さんは、横山光輝生誕80周年記念事業として一冊の本を刊行した。タイトルは『MY FAVORMORE』(監修・発行 横山光輝生誕80周年記念誌制作委員会  編集 由比敬介)

 この本には、鉄人28号ノートの表紙をぎっしり並べたページがある。その数42種。まさに80周年記念号を彩るのにふさわしい、多彩な絵柄に目を奪われる。 

( 平塚利晃 探求レポート2「鉄人学習ノートの巻」より)

 

 ただこれを堤さんの探索したものにそのまま対応させうるかと言えばそうではない。見れば「鉄人と正太郎」という題のついた絵柄が混じっている。周囲が金色のゴールド版も見受けられる。これは30円の豪華版だ。これらは別のシリーズなのである。この2タイプは現時点では1弾のみの発売と見られている。すなわち「鉄人と正太郎」10円小サイズと20円小サイズ、20円大サイズがそれぞれ1弾2種ずつと考えると計6種。ゴールド1弾2種と合わせて計8種。先の40種(【6】参照)にこれを加えて、鉄人ノートは48種は発売されていると堤さんはみる。

 ちなみに堤さんは、珍しい左綴じの鉄人ノートも持っている。昭和ノートは基本右綴じ。左綴じはライバルセイカノートの仕様である。『MY FAVOREMOREの写真からはノートのサイズや綴じ方はわからない。また画像があっても実物を確認できるとは限らない。これらがどのくらい発売されていたのか、ノート研究の分野は今も新情報が次々と出てきている。