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2017年12月

今入重一 / プロフィール

今入重一 プロフィール 1953年京都府に生まれる。日立執機工具などを経て1984年まんだらけに入社。 1986年、江口健一氏、堀井義信氏と横山光輝クラブを立ち上げ、会誌「オックス」を発行する。その膨大なコレクションから、『別冊太陽横山光輝マンガ大全』(1998)ほか数々の刊行物に資料を提供。復刻事業にも尽力し、横山作品の普及と基礎文献作成に大きく貢献する。 横山光輝生誕80周年には記念誌『MY […]

今入重一/ 横山光輝作品 ①

2017年10月中旬、雨の降る土曜日、埼玉・戸田公園で、今入重一さん主催による横山光輝ファンの集まりが催された。 今回のテーマは「伊賀の影丸」。 会場に入ると、正面のスライドではすでに影丸の人形劇の映像が流れ、壁側には影丸関連の貴重な今入コレクションがぎっしり並んでいた。今入さんは影丸をプリントしたTシャツを着て、忙しく立ち働いている。 3年前の横山生誕80周年から年1回開かれているというこの会に […]

今入重一 / 横山光輝作品 ②

今入さんは、1953年(昭和28年)京都に生まれた。 終戦後お父さんとお母さんは中国残留の生活でやっと帰国できたのがもう余程経った頃だったが、今入さんが生まれて1年くらいでお母さんはお父さんと離れ、今入さんを連れて長崎・佐世保に移り住んだ。佐世保の崎戸島という炭鉱の島で、お母さんは住み込みで働き、今入さんは、おじいちゃんおばあちゃん、お母さんの弟のおじさんと四人で暮らした。小2の夏炭鉱が閉山し、一 […]

今入重一/ 横山光輝作品 ③

「伊賀の影丸」は1961年~1966年、週刊少年サンデーに第9部まで連載された横山光輝の忍者マンガである。 主人公の影丸は徳川幕府に仕える伊賀忍者の一員で、頭領・服部半蔵の指令のもと、甲賀忍者などと激しい攻防を繰り広げる。 基本的に集団同士の対戦スタイルで、個々の忍者がそれぞれ独自の技で競い合う。勝負に負ければ敵も味方もがんがん死ぬ。展開も画面の動きもスピーディでとにかくテンポがいい。 当時、19 […]

今入重一 / 横山光輝作品 ④

横山光輝は後年こう語っている。 「昔は、忍者といえば巻物を口にくわえ、ドロドロと姿を消したり、大蛇を出したり、ガマになったりしたものでした。しかし、それではなんとなくおもしろくなかったので、煙は火薬玉を投げつける、速く動く、武器は新しいものを考える、そしてスピード感を出す・・・そういう新しい一つの忍者の形を造りました。この作品(「魔剣烈剣」)がもとになり、その後「伊賀の影丸」という作品につながって […]

今入重一 / 横山光輝作品 ⑤

今入さんは「週刊少年サンデー」1965年1月1日号、「伊賀の影丸」第6部「地獄谷金山の巻」から読み始めた。 折しも「別冊少年サンデー」で、第1部からの影丸の総集編が特集された。130円で高くて買えず貸本屋で借りて今入さんは読んだ。 そして文字どおり、取り憑かれた。 「影丸がゴーッと入ってくる。見たことない影丸がわたしの中にゴーッと入ってきた」 それと同時に目の前をいろんな影丸が動き始めた。夢の中に […]

今入重一 / 横山光輝作品 ⑥

あとになって今入さんは、子供時代の自分が何の気なしにノートに描いていた影丸のスケッチを発見してびっくりした。   自分は第6部から読み始めたのに、その自分が「かげまる」と記して、見たことないはずの第4部の絵を描いていた。総集編の写しではなく、話の前後を知らないゆえの勘違いが入っている。 伊賀者に化けて欺こうとする敵がおり、火傷をして醜い顔になった伊賀忍者がいる。自分は話の流れを知らなくて […]

今入重一 / 横山光輝作品 ⑦

もしかしたら自分はこれが好きなのかもしれない、好きだったのかもしれない。そういう言い方を今入さんは時々する。 今入さんは次第に横山光輝という作家を意識するようになっていった。 中学生になるとお小遣いが1000円にアップし、月刊誌などを買う余裕もできた。いろいろ読むうち、面白いと感じた作品が見ると横山作品だったという経験が何度かあり、自分は横山光輝というマンガ家が好きなのかもしれないと思い始めた。 […]

今入重一/ 横山光輝作品 ⑧

記憶に残る大きな買物をしたのは、確か19歳か20歳の頃、名古屋で漫博のような集まりがあり、親戚の子たちと遊びに行ったときのことだ。今入さんはそこで横山の「夜光島魔人」を8000円で買った。 高度成長の右肩上がり時代だったとはいえ、大卒の初任給が3万程度の頃だった。親戚の子たちが、ええっといって驚いた。 その頃、世間は安田講堂やあさま山荘で揺れていた。安保闘争、学園紛争の高まりの中、当時の人気マンガ […]

今入重一 / 横山光輝作品 ⑨

今入さんは「漫画の手帖」というミニコミ誌を情報源に、喇嘛舎、憂都離夜、中野書店といった古本マンガを扱う店にかようようになっていた。 二十代後半、この「漫画の手帖」を介して、その後の今入さんの運命を動かす大きな出来事が起きる。江口健一さんと堀井義信さんという横山光輝ファンとの出会いだった。 ふたりに探求リストを見せてもらい、今入さんはその充実ぶりにびっくりした。自分の知らない作品がたくさん載っている […]

今入重一 / 横山光輝作品 ⑩

ある日、今入さんは喇嘛舎ですごいものを見つけてしまった。 横山光輝の「地獄の犬」だった。 今入さんは迷った。 「何を迷ったかって、3万円なんですよ」 それまでいろいろ買ってきた今入さんだったが、3万という金額は想像の外にあった。内容自体に特別惹かれたわけではない。1957年「少年クラブ」の付録で発表された「夜光る犬」がタイトルを変えて貸本用に単行本化されたもので、肝心なのはB6判というその形だった […]

今入重一/ 横山光輝作品 ⑪

さて「地獄の犬」で異界に踏み込んでしまった今入さんは、ひたすら横山作品を買い続けていた。 「3万という大台を越えてしまったら」と今入さんは言う。 「次が5万だろうが6万だろうが、そこを越すと大体同じになってくるんですよ」 さらに言う。 「もう出しちゃった、そしたら6万だろうが8万だろうが、ガンガンお構いなしになってきて、感覚が麻痺してくるんです」 5万だろうが6万だろうががいきなり6万8万に飛ぶあ […]

今入重一/ 横山光輝作品 ⑫

1986年、江口さんや堀井さんと一緒に、今入さんは横山光輝クラブを立ち上げ、同人誌「オックス」の発行を始めた。 江口さんのリストは、1981年、川崎健夫さんとの共同作業による「横山光輝初期作品集」別冊解説として発表された。 また堀井さんの探求リストは、1992年「横山光輝の世界」に結実し、翌1993年、まんが資料センターの山本やすひこ氏は、これを原形として図版や新出資料を入れ込んだ「横山光輝の軌跡 […]

今入重一 / 横山光輝作品 ⑬

高橋誓氏によるアップルBOXクリエートは、特に昭和30~40年代の漫画作品の精力的な復刻で知られ、その分野の大御所的存在となっている。ここで復刻された横山作品の充実ぶりには目を見張るものがある。 「横山光輝名作集」全51巻及び別冊5巻。 まんだらけマニア館の国澤氏は、今入さんをインタビューして次のように述べている。 「横山先生自身が全集の発行は固辞されていたということは広く知られていますが、クラス […]

今入重一/ 横山光輝作品 ⑭

横山光輝作品で一番最初に何をあげるか。 鉄人28号を好きな人がいる。三国志をあげる人もいる。バビル2世を好きな人もいる。魔法使いサリーから入った人もいる。 巨大ロボ、対戦もの、魔法少女、SF、歴史もの。 横山光輝が作ったものは、個々の作品であると同時にしばしばそのジャンルそのものだった。横山は今わたしたちが自然に用いているエンタテインメントの骨法を残して去っていった。 横山の死後、その書斎には「何 […]

今入重一 / 横山光輝作品 ⑮

横山光輝はヒット作を数々生み出す巨人であったが、その立ち位置は手塚や石ノ森ほど派手ではなかった。 過去を振り返るより目の前の原稿を描きに描く作家で、多産な分暗がりに沈んだ部分も大きかったと思われる。そういう難しさに加え、特に出版をめぐるファン活動はしばしばデリケートで制約的なものとなる。ファンと作家側の関係性において横山光輝作品の場合ほど理想的な例も珍しい。   横山光輝のファンたちには […]