Mr.AE / ホットホイール⑮

AEさんは最近、反省しているという。
サスペンション機能を削られた近年のホットウィールを否定してきたことに対してだ。

「自分は最近のホットウィールの足回りを好きじゃないけど、マテルが30年前から値段をほとんど変えず、子供たちにこれを提供し続けているのはすごい。それを考えると、走らなくなった、とかあんまり悪口を言えない。
今の時代、レッドラインをサスペンションまで復元したら1000円は超えてしまう。子供が気軽に手に取れることを優先したマテルは、本当にホットな会社だと思いますね」

マテルっていいなあ。マテルが好き。

既存のキャラが欲しい訳じゃない。
オレはこういじった、こう表現した。
空想が屹立する座としてのおもちゃ。
それを体現するホットホイールは、AEさんの内なるおもちゃ観に火を点けて、今もびりびり刺激する。独立不羈の気概でシビれさせる。
根性入れて想像の世界を自分の手でつかむのだ。それがおもちゃだ。それこそリアルだ。つまり、生きている実感だ。

アメリカのモーターカルチャーのエッセンスをホットホイールに注入し、その魅力に偉大な貢献をした人物、ハリー・ブラッドリー。
そのかれは「1984年の車が1966年にバックしてきたみたいだと自分が思うようなもの」をデザインすることからスタートしたという。(既出)

それからほぼ半世紀が経った。
未来はあまりいい調子ではない。

ミスタ・ブラッドリー。あなたがどのような意味でそう言ったのか、正確なところはわたしにはわからない。
けれど、多様であることがいよいよ難しいものとなり、自由への意志が深刻に試されつつある現在、わたしはふと、G・オーウェルの「1984」を思い出す。

アメリカ、そして日本。
わたしたちはそれぞれどこへ向かってゆくのだろうか。
そのどちらにも、しのびよる不安と恐れの中で「1984」を読む者たちがいるだろう。世界の至る所で、暗い風の音に耳を澄ます者がいるだろう。

AEさんというコレクターの内側で、ホットホイールやドールやソフビ、さまざまなおもちゃは一つのものとなり、かれの世界をつくっている。
生の実感に境界はなく、想像力の水脈はつながっている。
おもちゃに憑かれ、おもちゃと共に生き、本物のリアルを追い求める現代日本のトップコレクターを揺さぶり続けるモノ。
アメリカ・マテルのホットホイール。


この項、了