Mr.AE / ホットホイール⑪

結局AEさんは、そのアメリカ滞在で8万円分くらい買った。
帰国後もその相手は、手元にあるダブりの品などをみんな売ってくれた。だいたいその1年で50万円くらいかけて、好みのホットホイールを揃えてしまった。

相手はまた、それまでドリームカーを闇雲に買うだけだったAEさんに、一般的な価値も勉強したほうがいいと勧めてくれた。
マテルの実車は一見普通に見えるけど、どこかが、何かが、変なんだ。
新しい素敵な概念を知ったAEさんは少しずつ勉強し、マテルは実車の名がつくタイプも必ず手を加えて彼らなりのモデルにしているのを知った。
  
それで徐々に実車タイプも集めるようになった。

「必ずどこかいじってる、それがホットホイールの魂なんですかね」とAさんは言う。
そういうのにびりびりしびれるのだ。

リアルとは、単に現実に即しているということではない。
ただの再現性とは全く別の次元で、本物の魂を感じさせるかどうか。
人が自分の空想をどこまで本気で実体化し、おのれの手中に持ってこようとしているか。

いかれた空想と、サスペンション。
ホットホイールはAEさんを、自分にとっての本物のリアルに目覚めさせた。