Mr.AE / ホットホイール⑨

AEさんがebayで最初に学んだことは、ホットホイールをアジアに売らないという人の多さだった。
(お前らにホットホイールはわからない。
どうせ転売するんだろ?)

とある個人的な販売サイトに、AEさんがどうしても欲しい車種を見つけたときのことだ。
交渉で食い下がるAEさんに相手は言った。
そんなに言うなら根性を見せろ。おまえが本当にホットホイールが好きだということを証明してみせろ。

たまたまAEさんは上司から海外駐在を薦められていた。これはまさにチャンス!
業務内容や滞在場所をなんとかやりくりしたAEさんは、生まれて初めて海外へ飛んだ。初海外で苦戦しながらも、宅配便のやりとりが可能なモーテルを仕事現場の近くに見つけて転居、満を持して例の販売サイトのコレクターに連絡した。
「俺はいまアメリカに来た。アメリカに居るぞ。どうだ、これで国内取引だ」

「いま希望する車種をカートに入れた。さあ、振込口座を教えてくれ。俺にホットホイールを売ってくれ」

お前の勝ちだ、と相手は言った。

お前を信用しよう。お前はほかのアジア人とは違うようだ。カートを見てもそれがわかるよ。
リストの中のもっと価値のある実車モノには目もくれず、自分の好きなモノを入れている。

わかったよ、お前は自分が欲しいモノを買いたいだけなんだな。

そう、AEさんの好むものは、一般的に価値を認められている「実車ベース」のホットホイールではなかった。
当時あまり人気の無かった「架空モノ(ドリームカー)」を、AEさんはひたすらカートに詰め込んでいたのだった。