Mr.AE / ホットホイール⑧

さらに時は経つ。

AEさんはいっぱしのおもちゃコレクターとして成長し、社会人となった。

かれの知っていたホットホイールは完全にどこからも無くなっていた。

ある日、なんとなく虚しさをを感じたAEさんは、家の押入をごそごそやって、当時いちばん遊んでいたホットホイールを発掘した。

紫のスペクトラフレームのシルエットという車種。一番初めに買ったブリスターパックのやつで、度重なるコース走行に塗膜は剥がれ、ホイールのメッキは擦れて無くなっている。だがテーブルに降ろした時のカチャッという接地音、サスペンションのグッという沈み込みは健在だった。

・・・そうだ、これだこれだ。

懐かしい感触がAEさんの内部に火をつけた。

俺は、自分にとっての真の「ホットホイール」をもう一度集め直したい。
いや、集めるのだ。当時なかった財力がいまの俺にはある。「みずから自由にできる力」があるんだ。かつては買えなかった車まで、思いのままに買ってやるぜ。

それは多くのコレクターを突き動かす原動力ともいえる感情だった。
いつのまにか周囲の世界から消えていた<ホットホイール>を、俺はこの手で取り戻してやる。

AEさんは国際的なネットオークションのebayに登録し、かつてのホットホイールを猛然と探し始めた。

その頃を振り返ってAEさんは言う
見つけたモノは当時それほど高くはなかった。
ただし、取引することができさえすれば、と。

買い始めてすぐわかったのは「not sell internationally」があまりにも多いということだった。
ホットホイールは基本的にアメリカ以外に売らない。
ほとんどは外国との取引が面倒という理由だが、それ以外にこれがあった。
「アジアには売らない。日本人には売りたくない」

(お前らホットホイールをわかってない。
どうせ転売するんだろう? )

またそういうディーラーに限って、極上のホットホイールを持っているのだ。

AEさんは早くも日米自動車交渉の山に乗り上げた。