Mr.AE ( ホットホイール )④

「世界一はやいミニカー」

速いって何だろう?

AEさんはそう思い、「あ、車って走るよなぁ」と不意に気がついた。

その頃普通にお店で買えるミニカーはトミカだった。
国産メーカーのトミカは、実車の再現性に長じ、さまざまな車種を発売していたが、特に走らせて遊ぶという感じではなかった。ガレージにしまうなど静的な遊びが主だった。

・・・これは自分の知ってるミニカーとは違っている・・・

恐る恐る手にとってみると、トミカよりやたらに重い。
バックの中でミニカーがガタゴトしないよう、丁寧に紙製のおさえが仕掛けてある。

AEさんはパッケージの裏を見た。ものすごいことが書いてあった。

「ホイールがしっかりしている」
「独特のサスペンション」
「まさつの少ないホイールベアリング」
「オイルはぜんぜん必要なし」

何なんだ、これは?
子供心にAEさんはびびった。

「まさつ」って何だ、オイルって何のことだ。そもそも「走る」って、どうやって走らせるんだろう。

パッケージには「ホットホイールのセットで遊べば、より速くより遠くつっぱしります」ともあった。

セット?

そこで目を上げると、子供の手が届かないような高い場所に「ホットホイールレーシングなんとかセット」という巨大な箱が置いてある。
セットという言葉も初めてだった。
…これは単体のミニカーじゃない。ミニカーに何か付いてるのか。
オレンジ色の狭い道路をミニカーが突っ走っているイラストに、AEさんははっとした。
…そうか、道路が付いている!そこでミニカーを「走らせる」のだ。

( 知ってるか?車は走らせてなんぼだぜ、坊主 )

それがAEさんと、アメリカ・マテル社「ホットホイール」との、最初の出会いだった。