Mr.AE / ホットホイール③

当然の流れと言うべきだろう。3歳にしておもちゃの洗礼を受けたAEさんは、ミニカーに狂った。
明けても暮れてもミニカー、ミニカー。
あの子の家に行くにはミニカーを持って行かないと怒られる、親戚たちはそう言うようになった。
スポンジが水を吸うように、子供のAEさんはミニカーの名前をどんどん記憶した。外に出たとき、あれはダットサンのセダンだ、とかすぐ車種を言って、すげえ子供だと驚かれた。

そんな或る日のことだ。AEさんはおじいちゃんの家に行き、近くのスーパーの片隅で風変わりなミニカーを見つけた。

1970年頃、普通のミニカーは箱に入れて売られていた。だがそのミニカーは、紙にプラスチックの覆いをかけて、柱にぶら下げられていた。正確には画鋲で張り付けにされていた。箱以外の包装は初めてで、AEさんはまずびっくりした。あとで知ったがそれはブリスターパックという手法だった。

その車の奇抜な色にも驚いた。
塗膜が透き通って、金属の地金が輝いて見える。
メッキという存在は知っていたが、表面が光るメッキとは異なり、透けた紫色の向こう側にあるボディが輝いていた。
デザインも妙だった。屋根は透明なドーム状で、コクピットは丸見えだ。こんな車は見たことがなかった。

大判の台紙には巨大な流れる炎のような文字で〈ホットホイ~ル〉とある。そのそばに不思議な言葉が書いてあった。

『世界一はやいミニカー』