キンキーズ・田中康隆 / カード類(カルビー他)⑩

普通は綺麗なカードを買おうとする。傷みのない、角がピンと立っている珍しいカードに金を出す。

でもこれは、そういう1枚しか持たない世界ではない。同じものをいっぱい持ってるところから話が始まるのだ。見比べて、ここが違う、そっちも何か変わっている、何が違うんだろう、と面白がる。

「なぜ同じカードをいっぱい?と言われても、この色違いますから」

だから仮面ライダーカード、たとえばナマズギラーの赤をくれ、青をくれ、という話になる。たとえばカメバズーカの色違いをグラデーションで揃えたりする。
紙と印刷というものを突きつめたら、目の前になんという沃野が広がっていたことか。

そんなわけで田中さんは常連さんからなじられるのだ。
「前から頼んでたじゃないですか、この色味を」とか、「あの色ほしいって(自分は)言ってましたよね」というふうに。
色で予約されても~、と田中さんは切ない顔をする。

なんて素敵なことだろう。
この世には、まだ見たことのない色がある。
変なんが出た。こんなんあるんや。
やめられない。
ここにはまだまだ発見があり、探検と開拓の喜びがある。

だからみんな大量に持っている。
「1万枚はラフです」
常連のお客さんは平然と言って笑った。驚くべきことにそれは自明のことらしかった。1万枚からきれいに整理してデータを取っている人もいるという。それは3万枚くらい持っている人だそうだ。

あぶない、かわいい、何万枚の世界。
成熟と狂気の入り交じる世界。
これが仮面ライダーカードの買い方の進化形。