キンキーズ・田中康隆/ カード類(カルビー他)⑤ 

田中さんは言う。

「子供の頃、ソフビを買えたのは金持ちの子。でもカードは小遣い、10円20円の範囲ですから。カードだったらみんな買えました。夏の日にジュース1本飲むのを我慢して」

駄菓子屋の5円引き、10円引きブロマイド、ミニカード、オマケカード類。カルビーの仮面ライダーカード、V3カード、野球カード、変身忍者嵐カードなどなど。シスコのウルトラマン、レインボーマン、キカイダー、ミラーマン・・・。
紙モノはふんだんに溢れていて、そして何よりも安価だった。

 

 

おもちゃは高価で買えなかった子たちも、みんなカードは通ってきていた。だからカードの前では誰もがちびっこに戻る。

ある意味、危険度も半端ではないのだ。
中古レコードを買いに来た客がここで何人ハマったことか。レコードを見ていてふっと振り返り、ああ懐かしいといってカードを見始める。

田中さんにはわかる。
これまで何度もその瞬間を見てきたのだ。
今、その客のどこかで、スイッチが入った。

客は1枚買ってゆく。
1枚買ったらおしまいだ。
必ず1週間以内に戻ってくる。
もう、目つきが変わっている。

「一応やめたほうがいいですよとは言うんですよ」
すべてを見てきた田中さんは、柔和なお坊さんのような表情で言う。

「ほどほどにしはったほうがいいですよ。入り口はいいですが中に入ると悲惨ですよ、って」

もちろんそんな忠告は聞かれるはずもなく、田中さんは奥さんたちにずいぶん怒られてきた。「あなたのせいでこうなった。なんとかしてくれ。あんたは女性の敵だ」と。

無理もない。

奥さまがた。この場所に来て事故ったのは旦那さんのせいですが、お気持ちはよくわかります。