池田誠 / 冒険王 ⑮

要するに、池田さんは大人になってこの号と出会った。

 

池田さんは語る。

「ぼくは当時、この本のことを何も知らなかった。この号がかつて本屋に並び、自分の知らない内に消えていっていたかと思うと、何ともいえない気持ちになるんです」

「これを見ると当時の自分が生きていた空気をそのまま思い出す。この号はそれを感じさせるパワーがみなぎっている」

 

「大人になって出会ったのに?」とわたしは訊いた。

 

池田さんはすぐ答えた。

「いや、たぶん、大人になって出会ったから」

 

思い出すのは、おそらく美しい郷愁の光景ばかりではないだろう。
仮面ライダーに夢中で、金欠で、ガツガツかつえていた子供時代。得られなかったモノはあまりにも多く、満たされなかった思いが胸に残る。手に入れたかったのに入れられなかったモノたちをこの手でつかむことに向かってゆく、それが池田さんにとっての大人になるということか。

 

まあちびっこ魂と言えば言えなくもないような・・・。

 

ひとりになって72年秋季号をめくると、ひらいたページでは仮面ライダーが怪人たちに取り囲まれながら戦っていた。

 

参ったねえ池田くん。

 

きみは、ぜんぜん大丈夫じゃないね。

 

 

(この項 了)