Mr.H/蒐集家⑧

 Hさんは言う。

「みんなは子供の頃買っていたもの、欲しくて買えなかったものを買っている。でも俺は子供の頃買ってないものを買っている」

 子供時代満たされなかった飢えから出発するコレクターは多い。当時買ってもらえなかったとか親にお宝を捨てられたとか、そんな経験から蒐集にのめりこんでゆく。

 

 本当は仮面ライダーとマジンガーZを買えばよかったのだ。ライダー物と超合金がHさんのちびっこ時代の夢だった。だが心底ビビッときたのは、それらではなかった。

 他の人の集めたモノを見て、なんだろう、こんなのがよく集まるなと思う。

「なんだこれは?なんだか俺にはわからないけど、なんかいいな。そうなるともうおかしくなっちゃう。自分でも止められない」

 

 懐かしむのではなく、未知のものに憧れた。こんなのがあるのか、という発見の驚きにいったん巻き込まれると、もうどうにもならなくなった。

 

「イベントで仲良くなって遊びに行って、いろんな人の家を見る。こんなによく集まるな、極めるってすごいもんだな、って思う。人が珍しいモノを持ってると欲しくなる。コレクションを見ると欲しくなる」 

 

 東十条の店主は興味関心の広い人で、アメコミのコレクターでもあった。棚にバットマンやスーパーマン、さらにディズニーの絵本なども並んでいるのに影響され、Hさんは英会話を勉強して一路サンフランシスコへ飛ぶ。アメコミを物色するかたわら、向こうのおもちゃ屋でバットマンの人形をほじったり、アイディアルのキャプテンサイボーグシリーズをしとめたり、ああもう、どんどん沼地へ落ちてゆく。

(画像はまんだらけ・変や)