Mr.H/ 蒐集家⑤

古い電話帳をめくって情報を集め、店をまわる。地方のおもちゃ屋、文房具屋、問屋。専門学校に入ってバイクの免許をとると行動範囲はぐんと広がった。よさそうな店を見つけても、入り込んで倉庫まで見せてもらえるようになるには1~2ヶ月かかった。Hさんはお酒だの菓子折だの奥さんの化粧品だのを店に持参した。
「最初から入り込もうだなんて、甘いんだよ」
我ながらあざといと思う手土産作戦は、実際嫌がられたこともあったという。だが喜んでくれる店主もいた。80年代後半、時代はまだ古いおもちゃの価値に覚醒しきっていない。だがハンターたちはとっくに活動を開始しており、Hさんの前には、既にそこへモノを探しに来たいろんな人の名刺が残っていた。一度入れるようになったらその店に通い詰めた。倉庫には、奥へ追いやられた古いモノたちが、日常の生活用品とごちゃまぜに詰め込まれている。Hさんは荒らさないよう丁寧に見た。倉庫の掃除も手伝った。
「お店の人に嫌がられないようにしないとさ。嫌がられたら次の人も入ることができないよ。前の人が嫌なことをやってたら、もう誰も入れないよ」
お目当ての電動怪獣はなかなか出てこない。だが目の覚めるような品が眠っていて、それらを安く譲ってもらえたこともあった。これは店の意識の薄さというよりもHさんが細心に築いた信頼関係のゆえだろう。モノのため以上に、Hさんには生来人の気持ちを大切にする気質があった。それらの品を下北沢に売って元手をつくり、Hさんは再びプラモを探し続けた。

(画像は、まんだらけ・変や)