星まこと /  アニメ探究 ⑩

「荒木伸吾さんといえば止め絵とか美形キャラとか言われてますよね。
たとえば『巨人の星』の星飛雄馬。普通の人が描いた飛雄馬の絵はこれ。これもうまいんですよ。でも荒木さんが描くとどうなるか?・・・全然違う。
前のだって十分うまいんですよ。でも荒木さんが描くとこうなっちゃう。荒木さんも自分でわかってない。どうしてなんでしょうね、こうなっちゃうんですよ、としか言わないんですよ」

「荒木さんはこういうすごい迫力ある絵を描くけれど、ぼくはそれ以上に何かこの人の絵には詩情がある、リリカルなものがあるとずっと思っていた。なんでだろう、と思ってたとき、昔の『アニメージュ』で特集があって、かつて荒木さんが劇画を描いてたっていうのがわかった。それですごく探したんです」


「劇画っていうと今のマンガファンは、ギャングだとかハードボイルドだとか思ってるかもしれないけど違うんですよ。こういう世界もある。リリカルで、コマ運びが石ノ森章太郎の「ジュン」みたいなんです。
十代の若者たち、手塚治虫をめざしてたような人たちが、漫画雑誌に描けなくて、こっちだったらデビューできると思って劇画に来たっていうのもあったんですね。
荒木さんは小さい頃に戦争でお父様を亡くされて、中学を出た頃から、ちょっと間違えたら指をなくすようなハードな鉄工所の現場で働いて、でも夜中になると徹夜で漫画の原稿を描いてた。世の中の矛盾とか冷たさとか全部わかった上で描いていた。そういうのが全部にじみ出て昇華されたものが、荒木さんのあの絵だった。それをぼくらも画面から感じとっていた。

荒木さんは、昔の劇画をぼくが持って行ったからすごく喜んで、これ読んでどう感じた?みたいに言ってくれて。あのころ聞けなかった感想を聞けて嬉しいみたいに言ってくださった。
ぼくがそこで思ったのは、ああ、荒木伸吾ってのは表現者なんだな、一流のクリエーターなんだな、って。それを受け取っていたからぼくたちは感動したんだなって改めてわかったんです」