高橋さって / 聖闘士聖衣大系②

 

『聖闘士聖衣MYTHOLOGY』(2012  ホビージャパン)

 

かつてえむぱい屋は東池袋にあった。今はとりこわされて跡形もない、サンシャイン60の日陰にひしめき合っていた雑居ビルの6階で、店内は天井までおもちゃの箱で埋め尽くされ、昼でも薄暗いジャングルのようだった。

 

・・・セイントクロスを買いに、フランス人が続々と店に押し寄せたんですよね?
わたしは聞きかじった知識でさってさんに尋ねてみた。
「香港からもいっぱい来ましたねえ。なんだかぴかぴかしていて、おめでたいと思ったんでしょうかねえ」と、さってさんはいった。
・・・おお、そういえばペガサスは麒麟に似てる、かも。
「はいはい、フェニックスは鳳凰ですかねえ」
わたしはメッキのセイントクロスが金の亀や鶴と居並ぶ、おめでたい図をひとしきり空想した。

だがさってさんのメッキ観はまた別のところにあった。そのあと倉庫をひっかきまわしながら、さってさんはわたしにこう言ったのだ。
「メッキは子供のおもちゃには必須ですよねえ」
・・・必須、ですか?
わたしは少し不思議な気がして反問した。
「はいはい、必須です~」
その口調が、ここは譲れないという感じのきっぱりした断定で、それがなんだか心に残った。

周知のことでもあろうが、ここで「聖闘士聖衣大系(セイントクロスシリーズ)」という玩具をちょっと説明しておきたい。
車田正美の漫画「聖闘士星矢」で、主人公の星矢を含む聖闘士たちが着用する甲冑は、普段は星座をかたどったオブジェの形状をしているが、分解されると甲冑=聖衣(クロス)と化し、着る者内部の小宇宙(コスモ)を呼び起こして、その者に強大な戦闘力を与える。
「聖闘士聖衣大系」は、登場人物のフィギュアに、オブジェにも甲冑にもなる組み立てパーツを付けた、いわば男の子版着せかえ人形である。