星まこと / アニメ探究 ⑥

「あのインタビュー連載で特徴的なのは、けっこう背景画家のところへ行くってことだと思います。みんなアニメといったらキャラクターに行くけど、実は背景ってものすごく大事で、要するに画面を見たとき、もうその7割8割は背景なんですよ。その背景をどういう感じにするのか、ギャグ調にするのか、リアルにするのか、色調はどうするのか。

これ原画です、『ポールのミラクル大作戦』っていう作品の背景原画。『ナウシカ』とか『ガッチャマン』の美術監督の中村光毅さんの美術ボードです」

「じゃあこの世界では夜はどんな雰囲気になるか?」

「こういうふうになります。裏山に木があって、もくもくと暗雲がたちこめて、ベルト・サタンがやってきて、ニーナをさらいに来るわけですよ。こういう背景があって世界ができる。そこにアニメーターがキャラクターを載せてゆく。

アニメの美術監督がどれだけすごいかっていうと、ふつう絵描きってのは風景を見ながら描きますね。でもこの人は頭の中に街がある。コンピュータが出来る前から三次元なんです。
ガンダムのホワイトベースなんて、誰も知らないですよね。でも廊下がどうなってて、光がどう当たってるとか、すべて美術監督が決めてるんです。ライティングがこうだから、艦内でも暗くなってるから、こういうふうに描くとか、頭の中に360度できあがっててどの角度からみてもいい。それで歩いていけるんですよ。その艦の中を。

監督の頭の中にある世界を、美術監督が共有して具現化する。言語化して、何百人といるスタッフに全部説明する。大変なことです。朝はこの色で、昼はこの色で、夜はこの色で、家の中はこういうふうにって。
けっきょくぼくらが見ているアニメの、色の世界ってのは、やっぱり背景がメインなんだろうなって思う。背景画がなかったら、どんなにいい絵が動いたってダメなんです」

「今はどうなんでしょう、コンピュータの時代だから、ちょっと描いたら画面上で角度をずらしたりとか、できるでしょ?でもあの頃はみんな手作業だった。これね、普通の絵画と違う点は、全部ピンが合ってるんです。設定のため綺麗に描かなきゃならないから、全部ピンが合っている。しっかり、リアルに描いてますよね。デジタルカメラみたい。
これは30年くらい前の絵です。その頃から美術監督ってのはこうやってたんです。匠の技です」