星まこと / アニメ探究 ④

「もともと本は好きだった。小学生で名作全集を読み尽くして、あとは江戸川乱歩とかモーリス・ルブラン、コナン・ドイルとか。
思い出すのは、伝記ものが好きだったこと。野口英世、ファーブル、リンカーン、ワシントン、偉人の伝記が大好きだった。でもこんな人になりたいとかっていうんじゃなくて、こんな時代にこんな人生があったんだというのを知るのが楽しかった」

高校のときノンフィクションで出逢いがあった。

竹中労『鞍馬天狗のおじさんは 聞書アラカン一代』(1976年 白川書院)
高平哲郎『みんな不良少年だった  ディープ・インタビュー』(1977年 白川書院)

竹中さんのは、鞍馬天狗をやった嵐寛寿郎の話の聞き書きです。口調からなにから克明に書いている。テープを録らず、全部手書きでやったらしい。
高平さんは「笑っていいとも」の構成作家をやった人で、赤塚不二夫とか堺正章とか当時とんがってた人たちにインタビューした、これも聞き書きの本。当時は知らない人もいっぱいいたんです。でも面白かった。ひととなりがよくわかって。みんな若い頃だからけっこうギラギラしてる部分が出てますよね。
ああ、こういう人生の描き方があるんだ、ってこのとき気がついた。こんなノンフィクションの世界があるんだ、こんなに人間が浮き彫りになる手法があるんだ、って。これはものすごく大きかった。今思えば、ぼくのアニメインタビューのルーツはここにあるのかなあと思います。

自分のインタビューも、出来ればこういう、しゃべり口調とか動作まで、読者が体感してくれるようなものにしたいなあ。それでこの人たちが、この中に生きている、この本をひらいてくれればいつでもこの人たちに会える、そんな感じに思ってもらえれば嬉しい。
竹中さんも高平さんも取材対象に対する愛というかリスペクトがある。リスペクトしてるから人を書けるみたいなところがある。ぼくはものすごくそれに影響を受けている。これがぼくの教科書です」