たかはしちこ(アップルBOXクリエート)/ マンガ復刻・同人誌 ⑨

ひとりの同人誌作家だった高橋さんの転機は、オフセット印刷の到来とともにやってきた。
同人誌の形態は、初期の肉筆回覧誌からコピー本へ、そして印刷所に発注するオフセット印刷本に変化した。自分たちの同人誌が手製のコピー本ではなくオフセット印刷のものになったとき、高橋さんはその内容のレベルが気になり始めたという。オフセットは、それまでとは格段に見栄えが良く、製作費用も段違いにかかった。

「でも原稿にレベルのばらつきがあるわけですよ。みんなで会費を出して作っているのなら、レベルの低い原稿も載せなくちゃならない。わざわざ印刷所で作って、お金を出して買ってもらって、これでいいんだろうかと思うようになった。それで自分一人でつくるようになったんです」

オフセット印刷の普及で、それまで一作家だった高橋さんを悩ませたのは、自分自身の内部にある一冊全体を俯瞰する目だった。形態の美しさに無関心でいられず、それを手にとる読者を内容でがっかりさせたくないという思いだった。
生来の編集者気質といえるのだろう。作品を見分ける目があり、形が内容を要求すると感じる意識があった。

こうして責任編集を始めた高橋さんは、同人誌界の横のつながりの中、自分の鑑識眼に合った作者を選び取り、一冊を構成することの面白さに目覚めた。
「自分で編集すれば、自分がこの人はうまいと思った人のものを、グループを越えて引っ張ってこられる。しかもわたしは描き手ですから、その人たちに作品でお返しをすることもできるんです」

自分がこれはと思うものを。そして読者が面白いと思うものを。
そうして既に述べたように、読者の求めに応ずるかたちで、復刻というものがそこに入ってきた。当初それは、ページを埋める選択肢に古い作品を入れることでしかなかったようにみえる。だが長年の間、おそらく製作の困難に直面すればするほど、同人誌と復刻というふたつの事柄は、高橋さんにとって車の両輪のようなものになってきた。