たかはしちこ(アップルBOXクリエート)/ マンガ復刻・同人誌 ④

連絡がついても許可がおりない。
版権を所有する企業やプロダクション、作家や権利者を取り巻く力関係の中で、どこにも所属しない個人の同人誌は最も弱いところにいる。
「特に、自分が読者として親しんだ作家さんに対しては、恐れに似た憧れがあって、直に訪ねていって復刻をお願いしたいということがなかなか言えない。後ずさりしてしまう感覚があります」と高橋さんは言う。

個人で作家にたどりつき、理解をもらうことの道のりは遠い。
理想的なのはファンの人やファンクラブが作家への橋渡しをしてくれることだ。ファンの協力を得ないと、結局企画が流れたり、うまくいかない部分が出てくるのだそうだ。

復刻のため作家と接している内、ファンから作家の耳に悪意をもった噂が入ることがあるという。そのファンは高橋さんが作家と親しそうにしているのを不快に思ったのかもしれないと高橋さんは語る。まったく関係ない人がご注進という感じで悪口を言ってゆくこともあったらしい。
「こちらのやっていることを邪魔だと思えば、悪口はなんとでもいえる。それも、まるきりの嘘でなく本当のことに想像をまじえて書く。だからいかにも本当らしくみえる。そういうのを書くなら直接質問してくれればいいのに」

勝手につくって勝手に儲けていると噂を流されたときは、その回ばかりでなく他の回にまで影響が及んだ。それまで気持ちよく接してくれていた先生が態度を変えたことも何度もある。許可をもらったのに、1~2冊復刻してからダメといわれたこともある。許可されたはずなのに許した覚えはないと言われ、逆らうこともできずお詫びしたこともある。その復刻からは撤退する。
「そういうときは、わたしも心が折れるんで」と高橋さんは言う。

無版権で雑なものをつくってインターネットで高値で売るひともいるが、高橋さんはそういうことはやりたくない。
「そこまでやって得るものはお金以外ないんですよ。そして悪評が立つ。わたしは臆病だから、そんなふうにやるものは楽しくない。やっぱり、よく出してくれた、懐かしかったというような一定の評価はされたいんです」
人から喜んでもらうことが、高橋さんの最も望む評価なのだ。