今入重一 / 横山光輝作品 ⑮

横山光輝はヒット作を数々生み出す巨人であったが、その立ち位置は手塚や石ノ森ほど派手ではなかった。
過去を振り返るより目の前の原稿を描きに描く作家で、多産な分暗がりに沈んだ部分も大きかったと思われる。そういう難しさに加え、特に出版をめぐるファン活動はしばしばデリケートで制約的なものとなる。ファンと作家側の関係性において横山光輝作品の場合ほど理想的な例も珍しい。

 

横山光輝のファンたちには、高度なリストをつくった江口さんや堀井さんがいた。アップルBOXクリエートの高橋さんはじめ、志ある復刻者たちがいた。すぐれた探究能力をもち、何かしたいという意欲に溢れる人たちがいた。
ひとり、小柄で温厚で、友人のつくったリストに目を見張り、清水の舞台から飛び降りる思いで3万円の貸本を買い、自分はマニアになったと実感するひとがいた。その出だしは手探りだったが、欲しいという思いは揺るぎなく、わき目も振らず買い続けて斯界屈指のコレクターとなった。手に入ったモノを素直に喜び、及ばぬことを苦にせず、他の人たちの才能を認め、いつしか横山作品を世に伝えるかなめの存在となっていた。

 

「誰もがあのひとのファンになる」
わたしに今入さんを紹介してくれたひとはそう言った。
モノを集めることに憑かれた第一級の蒐集家が、人と人とのあいだでそれぞれの活動をひらく柔らかな人格として立ち続けるけることはまれである。
横山ファンの活動は、マニアという存在が次代へ何をしおおせるかを語っている。
そして今入さんの生き方は、蒐集ということが不思議な無私のあかるさに近づいてゆく様子を語っている。




この項、了