今入重一 / 横山光輝作品 ⑦

もしかしたら自分はこれが好きなのかもしれない、好きだったのかもしれない。そういう言い方を今入さんは時々する。

今入さんは次第に横山光輝という作家を意識するようになっていった。
中学生になるとお小遣いが1000円にアップし、月刊誌などを買う余裕もできた。いろいろ読むうち、面白いと感じた作品が見ると横山作品だったという経験が何度かあり、自分は横山光輝というマンガ家が好きなのかもしれないと思い始めた。

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17歳のとき、今入さんは上尾のおじさんの家を出た。
小5から買いためた週刊少年サンデーは相当な量になっていた。新書などは持っていけたが、週刊誌は持ってゆけなかった。

「一応は捨てないでねとは言ったけど」

だが綺麗に捨てられた。

「仕方ない。何年分か、けっこうな量で場所もとるし。おじさんちは子供さんもできて、それもあって出ることになったんですが、当時ああいうモノはただ邪魔だ、ゴミだ、という感じだったですから」

親にお宝を捨てられたのをきっかけに蒐集にのめりこんだマニアは多い。今入さんの場合も、この喪失がその後の蒐集の原動力になったことは疑いないが、その口から自分の所有物を捨てられた怒りや恨みは出てこない。
モノの所有、そしてそれを置いておく空間の権利の所有。おそらく当時の今入さんにとって、それらはあまり自明なことではなかった。
今入さんは人がどこで古本マンガというものを買うのかも知らなかった。新書はそこそこ持っていたが、なくしたマンガを取り戻そうとしたとき一体どこへ行けばいいのかわからなかった。
ひとつだけ確かだったことがある。それは、この先自分は働いて自分の力でお給料を貰ってゆくということだった。

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