佐々木大(仮名)/プロ野球サイン⑥

ここで少し個人的な話をしよう。

わたしは佐々木さんと東京ドームの前売り所で知り合った。
我が家は長年巨人ファンで、ずっと巨人戦にかよっていた。

佐々木さんがサイン獲りを始め、本格的に巨人にハマっていった2000年過ぎあたり、現場の状況は激動だった。
90年代後半に低迷した巨人は、2000年ようやくセ・リーグで優勝した。
2001年をはさみ、原監督に代わった2002年、西武を4タテして日本シリーズを制覇した。外野スタンドは派手に沸いたが、その陰でファン同士のさまざまな勢力争いが激化していた。
2003年、東京ドームは外野自由を撤廃し、全席指定に舵を切る。
応援も席のとりかたも、ライト外野は一変した。

  

わたしたちは外野指定券をとるため、仲間で銀座のプレイガイドに並んだが、自由席になじんだ身にはなかなかうまくいかなかった。数年間そこでやってみて、やっぱり東京ドームに並ぼうということになり、前売り日はドームに行くようになった。
その頃すでに佐々木さんはグループをまとめる存在になっていた。
グループの人たちは選りすぐりだった。とにかく根性入れて並ぶ。しかも席の好みが激しい。
佐々木さんは派手な押し出しで、一見近寄りがたい雰囲気だったが、話してみると素直で饒舌で、人に対して心から感心したり有難がったりする。熱気で相手を巻き込んでゆくようなところがあった。
佐々木さんはいつも人の輪の中にいた。