佐々木大(仮名)/ プロ野球サイン②

みんなハッピーになればいい。
そう佐々木さんは言う。

だがなかなかハッピーになってくれない人もいる。
巨人V9の黄金期を支えた大ピッチャーで巨人軍元監督の堀内は、きまじめな雰囲気を漂わせ、めったにハッピーな様子を見せない。やはり不器用で優しい性格なのだろう。これがまたなかなかサインを書かないが、子どもには書く。佐々木さんのようなラテン系の大人にはどう見てもあまり書きたがりそうにない。

あるとき、堀内のサインが欲しくて、佐々木さんは再びドリーム・ベースボールに乗り込んだ。ちょうど少年野球のチームが来ていて、指導を受けていた。その場をうろうろしてみたが、さすが堀内というか、いっこうに打ち込める感じがしない。さんざんうろついた後、抽選で堀内のサインを当てた人を発見した。

  
 
「あのう、ぼく、堀内さんのサインボールが欲しいんですよ。
 ぼくの当てた~さんと交換してもらえませんか」

本当は直接欲しいけれど、ダメもとでそういう取引もしてみたりする。相手が満足するまであれこれねばって、なんとか堀内のサインをゲットした。
その人もハッピー、佐々木さんもハッピー。もちろん堀内だって、ラテンなおとなに追っかけまわされるよりはハッピーだろう。

誰もイヤな気持ちにならない、それがいい、と佐々木さんは言う。
そういうのがステキなサインのもらい方。


村田兆治


高田繁


槙原寛己